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2013年7月29日 (月)

《図書館》読書新聞『葦』78号のご紹介(第1回)

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読書新聞『葦』78号を発行いたしました。

本校では年に2回教職員が生徒に
オススメの本を紹介する読書新聞を発行しております。

今号では、数学科の教員や司書、
本年度着任した教員が本の紹介をしております。

7月20日に発行いたしました、
『葦』78号についてご紹介いたします。

◆M・ワルタリ 『ミイラ医師シヌへ』 数学科 鈴木公子

Photo_4 舞台は、紀元前のエジプト。アメンホテプ3世~4世の時代です。作者はフィンランド人です。テレビに良く出演しピラミッドの発掘などをしている吉村先生は、学生の頃、同じ作者の「エジプト人」という本に出会いエジプトの研究者になったそうです。これは、その「エジプト人」を簡単にした本のようです。

 紀元前のエジプトの王様でなく一般の人はどんな暮らしをしていたのでしょうか?それだけで興味が湧きます。シヌヘは医師である父のように医師になろうとして、町の塾に通い読み書きを習います。義務教育は無いようです。そして、神学校へ入ります。神官の元で学びます。神官は大変権力を持っていますが、とても皮肉に描かれています。本当の信仰はありそうになく、賄賂を受け太りきっている様子が描かれています。

 首尾良く医師になったシヌヘは、父の友人の頭蓋骨医師の助手として、ちょうど亡くなったアメンホテプ3世の頭蓋骨に穴を空ける手伝いをします。名誉ある仕事です。まだ、少年であったアメンホテプ4世とも顔見知りになりました。そして、自分の医院を持つようになったのですが、ある女性の色香に迷いだまされて、自分の家も両親の家も両親の死後ミイラにするための貯金も全てを失ってしまします。両親も死んでしまいます。一般の人もミイラにしていたんですね。ミイラにしないと死後の世界で大変なことになってしまいます。でもお金がないとできません。

 そこで、シヌヘはミイラ製作所に死体を持って行って、自分がそこの仕事を手伝うので自分の親をミイラにするように頼みました。この仕事は体に死臭が染みつく嫌われ仕事です。シヌヘは、一生懸命働き最後に親のミイラをこっそりピラミッドの所を掘って安置室に入れ落ちていた財宝を手に入れて(どちらも犯罪です)エジプトを脱出します。現在のイスラエルやガザ、シリアなどで、医師をして暮らします。

 当時エジプトはこの地方を支配していたようです。エジプトの正式な医師の資格を持っているし大変腕が良かったので、様々なお金持ちや王様の治療をして、大変儲かりました。その儲けの一部を貿易に投資して更に儲けました。紀元前にも投資などあったのですねえ。地中海での交易が盛んのようです。

 その後様々な冒険をして、クレタ島にも行きました。そして、最後にエジプトに戻りました。幼なじみは将軍となっていました。アメンホテプ4世は絶大な権力者になっていました。大金持ちになっていたシヌヘですが、権力には近づかず、以前の父親の住まいを買い戻し貧しい人たちの医師として暮らしたということです。

◆福岡伸一 『福岡ハカセの本棚』 司書 西村賢子

Photo_5 福岡ハカセといわれても知らない人も多いでしょう。『生物と無生物のあいだ』や『動的平衡』といったベストセラー本を書いた生物学者です。「生物学者か~。そんな人が書いた本だと難しい本がたくさん紹介されているのだろうな?」と思う人もいるかと思いますが、そんなことはありません。この本を読むのに「動的平衡」が何かわからなくても大丈夫。この本は書名が示すように、筆者である福岡伸一氏のお気に入りの本たちを紹介したものだからです。読書の出発点になった本、発展的な読書のきっかけになった本など、福岡氏にとっての道しるべのような本たちが勢ぞろいしています。福岡氏がどんな少年でどんな本をどんな風に読書してきたのか、実際に福岡氏の読書遍歴をのぞいてみましょう。

 はじめに書いてある文章を読むと、福岡氏の最初の本とのかかわりは図鑑からだとわかります。小さい頃から昆虫が好きで、昆虫を調べるために図鑑を使い始めたそうです。複数の昆虫が一つのページの中に同じ縮尺でほぼ等間隔に並んでいる様を見るのが大のお気に入りだったという文章を読んで、図鑑をそんな風に見る人がいるということに、まず驚きました。また、どんな小さな虫にもきちんと名前が付けられているということも図鑑から学んだという文章を読んだ時も、図鑑の読み方一つとっても自分とは全く違うなとつくづく感じました。

 第一章「自分の地図を作る」を読んだときにも同じようなことを感じました。地図をこよなく愛し、地図を頼りに行動するマップラバーだと自称する福岡氏は、物語の本を読むときにも私とは全く違う読み方をしていました。例えばこの章で紹介されている『エルマーの冒険』は、どうぶつ島に捕らわれた竜の子どもを救いに行く少年の話です。私自身も子どものころに大好きで、ハラハラする展開を追いかけて夢中になって読んだ記憶があります。私にとってこの『エルマーの冒険』は竜が出てくるファンタジーの起点というべき物語ですが、福岡氏にとっては「地図のある本」というくくりの物語だったのです。『エルマーの冒険』には確かに地図が描かれていて、少年の冒険の道筋がひと目でわかるようになっています。私にとってあくまでも添え物の存在だった地図は、福岡氏にはメインの存在だったということにとてもびっくりしました。同じようなことを『ドリトル先生航海記』の説明でも感じました。私にとって「ドリトル先生シリーズ」はファンタジーでした。動物の言葉を話せるお医者さんやいろいろなことができる動物たちが登場し、力を合わせて未開の土地や宇宙にまで旅行する夢のような話だからです。しかし、福岡氏は、ドリトル先生の記述の中に別のものを見出していたようです。福岡氏がドリトル先生シリーズを読んでどんな感想をもったのかは自分で確認してみてください。

 第二章「世界をグリッドでとらえる」では、自然の中にある色や形、絵画に関する本を紹介しています。ニューヨークでポスドク職に就いた際、フェルメールに出会った福岡氏はその作品に魅せられてしまいます。その後、彼は現存するフェルメール作品すべてを所蔵しているその場所で見るという夢を実現し、それに関した本まで書いてしまいました。『フェルメール 光の王国』という題名で出版されていますので、興味がある人はぜひどうぞ。写真が豊富でパラパラ見るだけでも楽しめますし、紀行本としてもおすすめの一冊です。

 第三章「生き物としての建築」では、築物の中に生物的観念を見出し、それにちなんだ本を挙げています。今はもう存在しない世界貿易センタービルが対になっていることへの考察は生物学者ならではだと思います。第四章「『進化』のものがたり」第五章「科学者たちの冒険」は生物学者である福島氏の真骨頂。紹介されている本はどれも興味深いものばかりです。第六章の「『物語』の構造を楽しむ」では再び、小説世界に戻って本を紹介しています。個人的には少し苦手意識がある松本清張や村上春樹の作品について福岡氏が熱く語っている文章を読むと、そんな感じならもう一度読んでみようかなという気になりさえしました。

 私は読書というものは本来強制されて行うものではないと思いますし、こう読まなければいけないと決まっているものでもないと思っています。(ここでいう読書は趣味の範ちゅうで読むもののことです。)同じ本を読んでも、人それぞれの知識や経験によって、感じ方は違ってくるのは当然のこと。そのうえで自分とは違った読み方を知るのは大事だと思います。そういった意味から、この『福岡ハカセの本棚』のように自分とは全く違った視点を持つ人の本のガイドブックを読むことは、良い刺激になりました。みなさんにとってもこの本が、新たな出会いの一冊となるといいなと思います。福岡伸一氏のフィルターを通して語られている本たちに興味を持って、実際に手にしてくれたらとてもうれしいです。