ブログ

トップページブログ高1FW  フィールドワークの全体学習が始まりました

« 生徒会  委員会が始まりました | メイン | 高3総合  面接の心得を学びました »

2020年9月 5日 (土)

高1FW  フィールドワークの全体学習が始まりました

9月3日午後、高校1年生が参加する「国内フィールドワーク全体学習」が始まりました。今年度は11月ではなく年度末の3月に延期してフィールドワークを実施します。現在喫緊の問題であるコロナウイルス感染拡大で浮かび上がってきた課題とフィールドワーク五方面のテーマを重ねて考えることで、自分から社会に参加する意識を持ってほしいというメッセージが話されました。 生徒たちは、学年全員で集まるのを避け、教室の電子黒板で説明を聞きました。これまでの先輩たちがフィールドワークを経てどのような視点を獲得したか、方面を選ぶときの注意なども語られ、現地への期待が高まります。

1

2

                                                                                             

【Zoom全体会でのお話】

フィールドワークとは何でしょうか。ここに載せたのは辞書の定義です。「現場の状況」「普段とは異なる環境に立つ」ということは日常を離れて現場へ行くことを示しています。

3

4

では、神奈川学園での「フィールドワーク」とはどのような意味を持つものかを説明します。昨年度の海外研修同様、方面を自分で選び取ります。選び取った方面で自分なりのテーマを定め、主体的に学びます。その上で、現地で「一流の大人たち」に出会い、「本物」を見ます。2000年度から20年間ずっとつないできた学びと繋がりがどの方面にもあります。その意味で、フィールドワークは神奈川学園での学びの集大成とも言えるものです。 楽しみにしていた海外研修はは直前に実施見合わせになり、最終的には中止になっています。みなさんはとても辛い思いをしました。コロナウイルス感染拡大の世界的状況を考えれば、学校の判断は間違っていなかったと言えます。ですが、コロナウイルスに関してはまだ秋以降、インフルエンザと同時期の流行が心配されています。現時点では11月実施を延期し、3月に国内FWを実施する予定です。但し、状況によっては再延期もあり得ます。そのようになることは決して望みませんが、もしそうなっても色褪せない学びを担当者の先生方と共に創ってほしいと思います。

5

6

ここで、フィールドワークがどのようなものか、二人の生徒の体験と言葉を紹介します。

一人目は水俣方面に参加したAさんです。彼女はとても不器用な人でした。自分に自信が持てず、集団の中で行動したり、話をするのが苦手で、そういう性格を変えたいと思っていました。人間関係に悩んでいたこともあり、水俣病のせいで生活が大きく変わった歴史がある中で、今も水俣で生活し続けている人はどんな思いでいるのか知りたいという興味や、人間関係がうまくいくヒントや、生きていく上でのヒントがあるかもしれないと期待して水俣を選びました。現地で語り部の方と出会った時に「共感できない」と思ったことや、見た目が普通の人と変わらないことで「思っていた患者の姿と違う」と感じ、大きく混乱しました。帰ってからの感想には苦しさしか書かれていませんでした。それでも彼女は考え続け、「分かろうとすること」こそが大事なのだと気づきました。そんな答を出せたのは高3の時です。そこから進路や大学での学びにもつながっていきました。表面的な答で終わらせなかったからこそ、彼女の中で水俣は生き続けています。

二人目はHさんです。四万十川に行きました。学校生活全般にとても前向きで、クラス内では議長を務め、高校生では文化祭実行委員長まで務めた人です。生きものや環境全般に興味を持ち、学びが繋がっていくことに感動していた姿を思い出します。もともと環境問題に関心が高かったのですが、事前学習を進めていく中で、「自然環境を守ること」と「便利な生活を捨てること」が同義に思えていた時期があり、「便利さを追求してしまう生活」を手放せない自分に悩んでいました。その悩みは四万十川方面で杉村さんと出会ったことで変わっていきます。「ただその生態系を守る」だけではなく、生態系全般に対して学び、行動することの意味を考えるようになり、「環境教育」という分野に関心を持つようになりました。経済と環境保全を両立させる循環型社会を創りたいと考えながら今、企業で働いています。彼女の中にも四万十川の出会いと学びは生き続けています。

2人の先輩は、大学や就職などの進路選択の機会にフィールドワークでの学びが生きました。もちろん、この二人だけでなく、「私にとってのフィールドワーク」は参加した一人ひとりの中に残っています。「日本を知る」というのがフィールドワークを貫くテーマですが、敢えて言うなら「現代日本の抱えている矛盾から今後の社会を考える」取り組み、と言えるのではないでしょうか。

7

8

その日本も世界の中にあります。2020年が始まってからずっと世界は新型コロナウイルス感染拡大に苦しんでいます。8月29日現在の感染者は2458万人を超え、死者は83万3500名に達しています。本当に深刻な事態であり、私たち自身が直面している問題です。ここからは「現在世界が直面している共通課題」をフィールドワークのテーマや方面と繋げて考えてみたいと思います。

新型コロナウイルスが引き起こしたのは重篤な肺炎だけではありません。登校再開後すぐに一斉登校にできず、現在までも距離をとる必要があることからも分かるように、その感染力の強さや潜伏期間の長さが多くの分断を生み出しました。感染者を受け入れたホテルの従業員家族や医療従事者が謂われない差別や中傷にさらされているという報道はみなさんも耳にしているのではないでしょうか。今から64年前、公式確認された水俣病も様々な差別や偏見を生み出しました。当時は有機水銀が原因だと分からずに奇病と呼ばれたこと、地名が病名となったために風土病のようにみなされたこと、元からあった「市民」と「漁民」間の差別が顕在化しているとも言えますが、水俣に起こったことと現在の状況は重なります。

9

10

一方、感染拡大を防ぐため、人の移動が制限されました。国を越えての移動だけでなく、自宅から出ることにさえ厳しい制限がかけられる都市封鎖に踏み切った場所も多くあります。世界各地で旅行は中止となり、観光地として名高いイタリア・ベネチアではほとんど観光客が見られなくなりました。その結果、今まで汚れていた運河の水がとてもきれいになり、透明度が上がったと報じられました。いつも曇りがちだったロンドンにも青空が広がるなど、珍しい現象が起こりました。人間の営みがどれほどの負荷をかけているか、考えざるをえない事例です。

観光という括りにはならないかもしれませんが、春日大社の神の使いとされて保護されている鹿は観光客がいなくなり、街へと出て行っているようです。人の営みが変わることで少なからず環境には影響があるのではないでしょうか。 観光に話を戻します。2019年には300万人に達していた外国人観光客がコロナウイルス感染拡大の影響でどのくらい減ったと思いますか。このグラフから分かるように、緊急事態宣言が出されていた4月は2900人のみでした。もちろん外国人観光客だけでなく日本に住む私たちも「ステイホーム」で過ごしました。観光地には全く人が訪れず、宿泊業、観光業、ガイド、観光バス会社などが軒並み大打撃を受けました。

「人が来ない」ということで臨時休業を余儀なくされた温泉旅館、商店街、人のいない駅や空港の様子です。「拝観停止」という看板を出しているのは京都の東寺です。3か月もの間休業せざるを得ない時、その業界に携わっている方たちはどのように収入を得るのでしょうか。例えば、ニュージーランド航空は従業員の30%に当たる3500人をレイオフ(削減)することを4月に決めています。旅行の需要が戻ってこないという見通しでしょうか。日本の観光業はこの先どうなっていくのでしょうか。

11

12

観光業の振興策として打ち出された政策の一つが「GO TO キャンペーン」です。「GO TO」は旅行だけではなく、外食なども含めて人の移動を促すものでした。みなさん自身はこの政策、このキャンペーンをどのように感じていますか?「GO TOトラベル」が始まってすぐに、沖縄県の感染者数が増え、県独自の緊急事態宣言を出さざるを得なくなりました。感染者ゼロを長く維持してきた岩手県で感染が確認されたのもこのキャンペーン開始と時期が符合します。「外出自粛緩和」の時期が未確定だった時に前倒してキャンペーンが開始されたことにも多くの疑問が投げかけられたのは記憶に新しいところです。

さて、そこから別の問題も考えてみましょう。先ほどお話した「感染者ゼロ」を長く維持していた岩手県の達増知事が、朝日新聞のインタビューに答えて興味深いことを語っています。

アメリカのウォールストリートジャーナルでも「100万人都市なのに感染者がいない」と、岩手県のことを驚きを持って報じました。達増知事は「その原因は何か」とインタビューで問われた時にこのように述べています。地域の課題である「人口密度の低さ」は、感染拡大を防ぐという点ではプラスに働きました。知事は「皮肉なことに」と前置きしながら、「海外からの帰国者も実は少なかった」と語っています。知事自身も大学時代は東京で暮らしたことがありながらも、「東京への一極集中」に問題意識を持ち続けていることが伝わってきました。

そして、現在は経済活動が再開し、人の移動も活発になっています。ポストコロナ(コロナ後)というよりは「withコロナ」の時代に入ったということです。そうなったとはいえ、感染のリスクが下がったわけではなく、むしろ上がっているのではないかと思われるほど日々新規感染者は増えています。都市と地方、生命か経済か…二者択一ではなくどちらも並び立たせるためには何が必要かを考える必要があります。

13

14

この感染拡大状況が収まった時、どんな社会が見えてくるでしょうか。これは国連が掲げたSDGsの17の目標です。男性・女性・LGBT、高齢者、障がいを持つ方も含めて、誰もが安心して暮らせる社会を構築するのはみなさん自身です。問題は決して単純なものではなく、複雑に絡み合っています。何を目指し、何を大切にする社会を創るのか、「理想とする社会」をきちんと思い描き、できることをしていくためにも、豊かに学べるとよいです。

コロナウイルス対策で脚光を浴びているリーダーには女性リーダーが多いとみなさんも耳にしているのではないでしょうか。「女性である」という部分のみを切り取るのではなく、何を大切にしてきたかに注目が集まっているとも言えます。幼い子供まで含めて国民とのコミュニケーションを欠かさないことや、科学的な根拠に立脚しながら「命を守る選択」を決断したことが評価されました。日本の問題を考える際には常に世界での動きも意識し続けたいものです。

どのような社会を目指すのか、「社会」の中にいる私たちに出来ることは何か、と問うのが国内フィールドワークです。この問いは進路選択の第一歩を迫られる高校1年生のみなさん一人ひとりに向けられています。是非「自分ごと」として考えてみてください。