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2015年12月 9日 (水)

重松清さんの講演会が行われました!

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12月3日、図書委員会主催による講演会が全校で開催されました。今年の講師は作家の重松清さんです。重松さんは、1963年岡山県生まれで、早稲田大学をご卒業後出版社での勤務を経て、『ナイフ』や『エイジ』、『きみの友だち』など中高生の心に響く作品を数多く執筆されてきました。2006年にも本校で講演をしていただき、その講演内容が今も語り継がれ、多くの生徒の要望に応えて今年も講演してくださることになりました。

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重松清さんは「どうも、重松清です。」と挨拶をされると、ご自身のお嬢さんのお話をされ、すでにお嬢さんたちが中高生ではなくなってしまったので、目の前にしている生徒は「未知の領域なんだ」と語りかけました。さらに、2006年に本校でお話をされた際は、「もっと生徒たちは後ろにいた気がする、なんか迫ってきたな」「俺、これだけの女の子と向き合ったことがないから、まじで困ってんだよ」と話し、生徒を笑わせて緊張をほぐすと、「いいことを言ったら大きくうなずいたり、面白いことを言ったら笑ったりして、僕をいじめないように話を聞いてください。」と語りはじめました。

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「今日の話はみんなとひとりについてです。」と重松さんは語ります。「ずっとみんなでいるとひとりになりたくなるし、ひとりが長くなると、友達といたくなる。みんな、みんなとひとりの間を行き来している。」生徒たちは大きくうなずきます。「その時にね、とっても大事になるのが、ことばの力だと僕は考えているので、今日はそのことについて1時間ちょっと話したいと思います。」重松さんの講演が始まりました。

 重松さんは、自身の小学校時代のことを振り返りながら、給食のカロリーや運動中の水分補給の方法の「正解」が数年たつと変わったことを生徒に話しかけます。「かつ丼とざるそばどちらがカロリーが高いかには正解があるよね。」「じゃあ、みんなはかつ丼とざるそばのどちらが美味しいですか?かつ丼の方が美味しいと思う人…ざるそばの方が美味しいと思う人…」重松さんの問いかけに生徒が手をあげます。

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「数値で比べられるものは簡単だけど、そうでないものを比べるときに「正解」は人それぞれにあり、自分と違う答えを間違いとは言えないんだ。ざるそばの方が美味しいと思う人を間違いとは言えないよね。」生徒は真剣に耳を傾けています。

「みんなの正解の輪の中にいると安心だよね。みんなと同じは楽でもあるし、みんなは悪いものじゃない。みんなの良さもある。学校はみんなの良さを学ぶところでもあるよね。だけど、みんなの中にいると時々、みんなの外にいる人のことを忘れがちになってしまうんだ。」重松さんは続けます。「今では当たり前になっている、スロープや車いすの人用のトイレは30年前にはほとんどなかった。それは、30年前は中々そういったバリアフリーがないことで困る人のことを想像できなかったんだ。」

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「みんなの外にいる人、もっといえば自分以外の人に対して、少しずつでいいから想像力を働かせてください。想像力を働かせるには、知っているだけではだめなんだ。」「日本中の人が点字ブロックを知っています。でも、帰り道に見てみてください。点字ブロックの上に自転車が置かれていたり、荷物を置いて塞いでいる人がいないでしょうか。点字ブロックが目の不自由な人にとって歩くのに必要なものだということを知っているだけではだめなんです。それを塞ぐことで困る人がいることを想像できないとだめなんです。」重松さんの言葉に多くの生徒がはっとさせられました。

「じゃあ、今度はエアコンを買いに行くことにしよう。みんなは何を優先してエアコンを選ぶ? 省エネを優先する? お手入れの楽さ? 付加価値? 値段の安さかな?」「自分がどれを優先するのか手を挙げてください。」生徒たちはそれぞれ手をあげます。

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「この質問を講演会では聞くようにしているんだけど、だれを相手にしていても必ず同じ結果になります。」生徒たちはどんな結果なのか耳を傾けて、重松さんの言葉を待ちます。「まず、圧倒的多数はありません。」「それと、どの選択肢にも必ず手を挙げる人がいます。」世の中には、大きな正しさがどーんとあるのではなく、違いはあってもどれもが間違っているわけではないと重松さんは語ります。

「エアコンを買いに行くと迷うよね。迷うときたいていの人は困った顔をしています。迷うことは楽しいことではありません。誰かが決めてくれたら楽だし、後悔もしないでしょう。でも、そういった人任せの人生は幸せではない、幸せだと思ってほしくないんです。」「自分のことは自分で決められる世の中であってほしい。」

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「学校でのテストでは迷いなく正解を選ぶことが必要かもしれない。でも、うーんうーんと悩むことだって人生ではすごく重要なことなんだ。時は失敗しちゃったっていいんだ。世の中はやっぱり厳しいわ。社会に出て初めて迷うっていうのはつらい。だから、いまのうちにたくさん悩んでほしい。やっぱり学校の先生って迷ったり、ちっちゃな失敗をすることを救ってくれるよ。待ってくれるよ。学校というゆっくり迷うことが許される場所にいるうちに、たくさん迷ってほしいと僕は思います。」

重松さんは、ぜひ迷った体験を大人に聞いてほしいと続けます。「人生には様々な局面でいろいろな迷い方があって、色々な失敗からの立ち直り方がある。その立ち直り方をサプリのように取り込んでほしい。」そして、物語をたくさん取り込んでほしいと生徒に語りかけます。「マンガでもドラマでもゲームでもいいけど、小説は古今東西の名作が日本語で読める。これは本当に素晴らしいことなんだ。」「出会いは図書館でもいい。気に入ったら買って自分のものにしてほしい。中高生で出会った本は一生つきあっていけるし、ことばの力が増していくんだ。」

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「ことばは、人を傷つけ、えぐる力を持っている一方、人を救う力がある。どっちの力もあるんだ。だから、自分の言葉を届ける相手に想像力を持ってほしいんだ。」重松さんはさらに友達とのかかわり方について語りかけます。

「同じが友達になる第一歩だよね。好きなアイドルとか、クラスや帰り道が同じだったり。だけど、プラスして違うことがいいと思える友達が増えるといいよね。同じが友達の全てになってしまうと、違うものが敵になってしまう。それは本当にもったいないし、怖い話でもある。」「いろいろな正しさがあって、自分の正しさもあるっていうのを忘れないでほしい。なかなか大人になってからは難しいから、中高時代に友達関係に悩んだり、迷ったり、少しずつ失敗しながらおぼえていってほしい。」そして、みんなでいる安心もいいけど、自分は自分だという一人でいることも大切にしてほしいと語りかけます。

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また重松さんは、家の建築に例えて次のように語りました。「家を作るときに足場というものを組みます。この足場というものがなかったら、2階に窓はできません。しかし家が出来上がったときには足場はもうありません。でも、足場がなかったら立派な窓はできないのです。中高時代はこの足場のようなものです。大人になったら見えません。今この足場があるうちにいろいろ歩き回って、悩んで塗りなおしたり、磨いたり、色々してみてください。」

 重松さんは神奈川学園の校章には申し訳ないんだけどと言いながら次のように語りました。「俺はね、桜よりも紅葉の方が好きなんだ。」「なんでかっていうとね、桜はみんな同じで一斉に咲くから美しいんだよな。でも、紅葉はいろんな木があって、一本の木の中でも色づいている葉もあれば、まだの葉がある。それでいろんな模様になって、美しいんだよな。桜の美しさも認めるけど、君たちも、いろんなものがあって、いろんなものがあるから楽しいんだと思えるような大人になってください。」最後に大きなエールを送ってくださいました。

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重松さんは、ご紹介した以外に本当にたくさんお話をしてくださいました。そのどれもが具体的で、生徒に分かりやすい言葉を選びながら語りかけて下さるとともに、笑いを取ったり、手を挙げさせながら講演に参加させ、生徒たちは重松さんの話に夢中になりながらあっという間に終わりの時間が来てしまいました。生徒たちのこれからの人生を支えてくれる沢山のエールをいただいた本当に充実した2時間になりました。