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2021年12月24日 (金)

2021年度 2学期終業式

 12月22日(水)、Zoomで2学期の終業式が行われ、全校の生徒はそれぞれの教室で高橋教頭先生のお話を聞きました。以下、お話の要約です。

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 (前略)

 今日は、このような3つの内容でお話します。1つ目は、全校でお迎えすることができた辻村深月さんとの出会いを振り返ります。

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 今年度の図書委員会主催の講演会で、直木賞作家・辻村深月さんに出会うことができました。図書委員の方々が集めた質問に、とても丁寧に答えてくださった誠実なお姿を今もはっきりと思い出せます。

 (中略)

 私は及川校長先生と一緒に講演会前に辻村さんとお話しました。その時に、初期の作品の感想を伝えると、「その続編を書こうとして、昔の作品を読み直した」と教えてくださいました。そして、「若い頃の作品、17歳の自分には「敵わないな」と思うんです。」とおっしゃいました。・・・みなさんはどう思いますか?デビューしたての頃、「書きたい」という思いに突き動かされて必死で綴った物語には、がむしゃらなエネルギーが詰まっている、どんなに経験を積んで、上手に物語を組み立てられるようになったとしても、あのひたむきな情熱には敵わない、という意味でした。辻村さんが、17歳の自分を丸ごと肯定して、受け容れて、今も「作家であることを続けている」…その姿こそが「自分が夢見たことを大事にしてよい。その努力はきっと未来の自分を支えてくれる」というメッセージではないかと私は思いました。

 (中略)講演会の中で語られた「ある時点で突然大人になるわけではない。大人と子どもは地続きです」という言葉にもみなさんへのあたたかなエールが感じられます。みなさんは「何ものか」になる道のりの途中です。私も含めて、大人もそうかもしれません。今の自分を大事に、「~をしてみたい」という初期衝動を大事にして、未来へと一歩を踏み出していけたらと思います。

 

 2つ目のテーマです。辻村さんのメッセージからもう少し掘り下げて、「大人になる」こと、「社会との関わり、他者との関わり」を考えてみたいと思います。

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 みなさんは、1学期の終業式に私が話した「利他」というキーワードを覚えていますか。

 コロナウイルスによるパンデミックが起こり、注目された言葉です。「パンデミックという深刻な危機に直面した今こそ「他者のために生きる」という人間の本質に立ち返らねばならない」と語るジャック・アタリさんや、「排他主義がはびこり、分断が加速する殺伐とした時代の中でよりよい社会の在り方を考えるために、自分のためでないもののために行動することが『利他』です」と語る美学者の伊藤亜紗さんを紹介しました。私たち一人ひとりが社会の中で他者と共に生きる存在だからこそ、大事に考えたい言葉だとお伝えしました。

 みなさんは、「自分以外の誰かのために」、とどのような時に思えるでしょうか。「その人のためになる」と思っても、意外に相手に気持ちの負担をかけてしまうことはあるかもしれません。そんな私たちの気持ちの動きを丁寧に掬い取り、「利他」を考えて発信している方の一人に中島岳志さんという政治学者がいます。(中略)中島さんは「利他」にがんじがらめになることが、人との関わりの中に違和感を生み出す瞬間を見逃さずに論を展開していました。

 (中略)

 中島さんは「利他的になること」はそう簡単ではない、と置きながら、難しさを乗り越える一つのヒントを紹介しています。みなさんは「注文を間違える料理店」があることを知っていますか?宮沢賢治の名作「注文の多い料理店」から名前のヒントを得た、期間限定のレストランです。ここでは自分が頼んだものとは違う食事が出されたり、お水が2回出されたり…色々な「間違い」が起こりうるレストランです。「え?それでよいの?」と思うかもしれません。「困るな」と思うかもしれません。ところが、このレストランは大きな注目を集めました。

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 このレストランでお客さまを迎えるホールスタッフは、認知症のお年寄りです。(中略)お年寄りたちは、注文を忘れてしまうことがあります。もちろん、間違えないように頑張っています。わざと間違えるのではありません。それでも「まちがい」が起きた時に、先に「枠組み」があることでお客さまは、笑ってその「まちがい」を受け入れられます。何よりお年寄りたちが「労働」から得る喜びは大きく、その日のうちに今日のできごとを忘れてしまったとしても、心地よい疲労感、達成感を味わっています。このスタッフの表情、お客さまの笑顔が「枠組み」の意味を雄弁に語っていると私は思います。私たちの暮らす「社会」は「枠組み」です。それは創りかえることができるものです。「寛容さ」「やさしさ」に溢れ、一人ひとりの状況に添うことができる社会こそ、「多様性を認める」ことに繋がり、「利他」を実践できるのかもしれない、と私は思いました。

 そのような「社会の枠組み」を作るために、私たちができることは何でしょうか。最近読んだ寺地はるなさんの小説の中にこんな言葉がありました。これは、ボロボロに傷ついて心を閉ざしていた陽子さんという女性に、幼馴染が声をかける場面で語られた言葉です。陽子さんが抱く「他人のために」「誰かを助けたい」という思いを否定せず、まず「自分で自分を大切にするとよい」と語りかけられ、陽子さんは立ち直るきっかけをつかみます。

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 「自分をないがしろにしない」こと、「自分を大切にする」こと・・・ それは苦しさを回避するだけではないかもしれません。苦しい時に少し休んだとしても、また歩き出せるように、自分の力をしっかりと蓄えておくことでもあります。社会の仕組みを知る、コミュニケーションを取れるように言葉を豊かにする、論理的に物事を考えて整理し、先を見通すことができる・・・この力の土台を養うのは今です。学校の授業、行事、委員会、部活、日常の一つひとつに誠実に取り組むことでついていく力はこれからのみなさんを支えます。「誰かのために、何かができる」ようになるために、毎日の営みに真摯に向き合っていきたいものです。

 

 ではここから、みなさんが取り組んだ2学期の学びや活動の豊かさをいくつか紹介します。

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 1学期同様、2学期には沢山の豊かな出会いがありました。中学1年生は平和学習に調べ学習も含めて取り組み、自分に引き付けて「非平和」の状態を乗り越えるために必要なことを考えました。中学2年生は、クラス委員会が中心となって、みなが楽しめる運動会を企画しました。半日でしたが、クラスの仲間と一緒に身体を動かして大きな充実感を得ています。中学3年生は「多文化共生」をテーマとした一日研修を5つの方面に分かれて実施しました。「日本の中の他国・他文化」「日本に暮らす外国人市民」について知ることで、大きく視野が広がっていきました。高校1年生は、3月に延期された国内フィールドワークに向けての準備が着実に進んでいます。オンライン交流を取り入れたり、外部講師をお願いしたりすることで、学びがより豊かになっていきました。

 高校2年生は、11月に国内フィールドワークが実施され、5つの方面で学び、問題意識を深めてきました。岩手・宮城方面に参加した方の感想には具体的な「提言」が記されていました。一部を紹介します。

 「今回フィールドワークで美術館を訪れて「想定外と言われている東日本大震災は想定できるものだった」という言葉を聞いて、悲しく、悔しい気持ちになった。あの悲惨な災害は歴史を学び、少しでも情報を疑えば、人の死を減らせたのか、と考えると、次に来るべき首都直下型地震や南海トラフは、今どんな想定がされていて、昔この場所(横浜)にはどんな地震が来たのか、知らなきゃダメだと思った。学校の避難訓練は、一回でもいいから実際に西グラに避難するべきだと思う。いつも画像で説明されるだけで実感がないけれど、いざ本番となった時、電気はついていないだろうし、みんながクラスにいるとは限らないし、休憩時間だったらどうやって指示を通すんだろうと考えるだけで問題があふれ出てきた。私の小学校は「この日防災訓練があります」と言われるだけで、そのタイミングは毎回違っていて、授業中に来ることが多かった。神奈川学園も精華小学校と一緒に避難訓練をするべき。もっと上に逃げるべきだと思う。…せっかくフィールドワークで学んだのだから、避難訓練からでも意識を変えた方がいいと思います」

 本当にそうだと思いました。フィールドワークでの学びを、自分に引き付けて考え、率直に学校の避難訓練を変えようと具体的に考え、感想として伝えてくれました。教職員として、この声はしっかり受け止めます。更に言えば、生徒のみなさんが生徒会を通して「自分たちで防災訓練を変えよう」と動き出してください。「枠組み」の一つである学校の活動を見直し、意味あるものに変えていく・・・その機会は、みなさんに等しく与えられています。調べたこと、学んだことを「未来」に活かしていく、そのような姿勢を常に大事にしてください。

 

 最後に紹介するのは、つい最近行われた生徒会行事です。文化祭放課後公演は、どれも素晴らしいものでした。公演を実施できるかどうか不安に苛まれたり、練習時間が十分にとれずに焦ったりしても、部員同士で励まし合い、日ごろの成果を十二分に披露していました。舞台を見守る客席の期待に満ちた雰囲気も印象深いものでした。観客がいることで舞台での発表がより生き生きとし、お互いに力を与え合っているようでした。

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 放課後公演のジャンルは様々でしたが、上級生が下級生を励まし、お客さまに最高の舞台を届けようとしている点は共通していました。上級生の技術の高さ、クラブ全体に目を配りながら妥協せずに取り組む姿勢は見事で、下級生は上級生を目標としながら練習を重ねて晴れ舞台に立ちました。この経験が蓄積され、「文化」として繋がっていくのだと実感しました。辻村深月さんがおっしゃる「キラキラしている時間」そのものだったと思います。

 演じたみなさんに大きな拍手を送りたいですし、企画・運営を担当した文化祭実行委員会のみなさんに、あらためて感謝の気持ちを伝えたいと思います。

 

 明日から冬休みです。高校3年生のみなさんは、進路実現に向けてラストスパートをかける時期です。共通テスト実施まで一か月を切りました。不安が募るかもしれませんが、今までみなさん自身が積み重ねてきたことを信じて努力を継続してください。応援しています。中3以上のみなさんは、担任の先生と面接をして来年度の選択科目を選び取っていきました。学習や進路に関する学年集会も各学年で行われています。多くの学年で言われているように、3学期は今年度のまとめの時期であると同時に、来年度への準備期間「ゼロ学期」と位置付けられています。冬休み、ゆっくりと今までの自分と向き合い、来学期への力を蓄えてください。みなさんの冬休みが実り多いものになるように願って、終業式のお話を終わります。

 

〈お話の全文はこちらから〉

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 最後に部活動などで優秀な成績を収めた方々の紹介がありました。

 ブログの更新は、しばらく冬休みとさせていただきます。